体には治ろうとする力があります。体には、健康状態が一旦バランスを崩すと、自分でそれを正そうとする目的がある。そう考えれば、悪くなったから悪いところを取ってしまって、人工物で補うのでは、一時的にそれで問題が解決したかのように想ってしまいますが、悪くなる原因そのものに気づいていないから、また悪くなってしまいます。
病気を一時的に取り除くことよりも、患者の体そのものをよくするのが本来の医療の目的だと考えると、問題の見方、考え方が変わってきます。問題がみつかったとき、その症状を緩和したり解消すればそれで終わりではなく、その病気には目的があると考えてみましょう。
だからうちではいちいち手鏡を持ってもらい、お口の中を一緒に見ながら、いま口の中がどうなっているのかを確認してもらっています。自分の目で見れば、「ああこんなに汚かったのかとか、あぁこれがむし歯なのか」ということが実感できます。きれいになったらどうなったかをまたきちんと鏡で一緒に見てもらいます。
そうすると自分の歯がきれいになった、むし歯がなくなってよくなった口の中を見て、自分の歯が今度はとても大切で愛しいものにすら感じられてくるのです。
不思議なもので、自分で目で見て実感できると、今まではちゃんと見たことがなかったから無頓着だったのが嘘のように皆さん自分の歯を大事にしようという気持ちになってくださいます。なぜそうするかというと、本来の健康な姿に近づけるには、患者さん自身が気づくことが大切だからです。
だいたいの患者さんは、痛みとか不快な症状があって、マイナスの入口からこられるでしょう。でも最後にはうちに来てよかったなぁと思ってもらう。これから自分の歯を大事にしようという気持ちになっていただく。それがプロとして導く、患者さんの出口になるからです。
手鏡で一緒に口の中を見ていただくのは、面倒くさいことかもしれません、余計なことかもしれません、病院にとっては一円の得にもならないことです。
しかし、うちではスタッフも全員、患者さん自身に自分の口の中を見てもらいながらどういう状況か、それがどうなったかということをプロとしてご説明できるようにしています。誰のためでもなく患者さん自身のために、とても大事なことだと思っているからです。
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